「風は春、空は虹、愛は波間に隠れている」
- The wind is spring - There is a rainbow in the sky - Love is hiding in the waves -

An'archives / An'31

2023年9月15日発表
LP / シルクスクリーンジャケット
4000円




<A 面>
1. 鳥のように飛んで 19:50

<B 面>
2. 虹が浮かんでいる 10:34
3 虹が浮かんでいる [Endless Descent] 09:43






演奏者
g,vo.harmonica.etc   紅ぴらこ
g,bamboo flute.etc     影男
b, .etc          松枝秀夫
drs, .etc     マーク・アンダーソン



録音 / 2021年5月14日 <Underground Spirit 16> Silver Elephant
レーベル / An'archives ()
マスター / Taku Unami
ライナーノート / Jon Dale
印刷 / Alan Sherry
水晶の舟
風は春、空には虹、愛は波間に隠れている

1999年の結成以来、水晶の舟は日本のアンダーグラウンドで最も魅力的なグループのひとつであり続けている。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのサード・アルバムの優しく歌われるバラードを、伝説的な日本のフリー・ロック・グループ、裸のラリーズが作曲し直したかのような、彼らの長く物憂げな曲は、そのシンプルさの中に破壊的な魅力がある。彼らの新しいアルバム「風は春、空は虹、愛は波間に隠れている」には、2021年5月にシルバー・エレファントで行われたライブが収録されており、デュオの他ベースに松枝秀生、ドラムにマーク・アンダーソン(Greymouth, Mysteries Of Love)が参加している。

その間に、P.S.F.、Holy Mountain、Important、Archive、8mm、Essenceなどからアルバムをリリースし、それぞれのアルバムは、変わり続けるデュオの姿を現している。コラール(讃美歌)の様なメロディーと瑞々しい音色の波、影男のギターが放つ宝石を散りばめた様なチャイム、濃密なテクスチャーのパッセージが、曲を静寂と悲しみのブラックホールへと引き込んでいく。そして、かつて紅ぴらこがジャーナリストのフィル・カベリーに語ったように、「水晶の舟の風の歌、音、言葉は、悲しみや痛みといった悲痛な感情から生まれることが多い」のだ。

風は春。空には虹。愛は波間に隠れている」は、「チェリー」の深いブルースから始まる。この曲は、最もエレガントな2コードのマントラを軸にした、引き込まれるようなドリフト・ソングだ。このデュオの演奏には絵画的なものがある。実際、90年代後半に出会ったとき、影男は画家、紅ぴらこは人形作家で水彩画家だった。この曲では、魅惑的なギター・ラインが、紅ぴらこの催眠術のようなワン・コード・ストラムの揺らぎと音の鳴り響きの中で、延々と巻き付き、絡み付いていく。この曲は、まるで失われた魂に語りかけるかのようなアクロマティックな雰囲気を持つアルバムの、傷つき、静かに絶望的なエンディングである。

An'archives



水晶の舟の作品集は、惑わされるほど単純な感情の地理への地図を提供してくれる。クレナイ・ピラコとカゲオの長年にわたるデュオは、1999年以来、最も豊かな地形を繰り返し掘り起こしてきた。2本のギターの絡み合いによって、曲は不気味な形に彫刻され、クレナイのクリスタルのような歌声は、子供のギターのコードから永遠の神秘を引き出す曲の上で、最もシンプルで深遠なメロディーを歌う。2021年のライブでは、ベースの松枝秀生、ドラムのマーク・アンダーソン(グレイマウス)とステージを共にした。

その長さと、彼らの演奏の揺らめく幽玄さが、時には何マイルも遠く、何十年も過去から放送されているように聴こえることがあるにもかかわらず、これらの曲にはいつも、とても近くに、何かがあるのだ。風は春に...」で、カルテットは「チェリー」を手にする。この曲は、何年にもわたって、さまざまなアルバムで何度も何度も繰り返し演奏してきた曲だが、2コードの催眠術のようなこの曲には、さらに多くの発見がある。1本のギターは、ひたすら音を弾き出し、あるいはアンプの配線を通してヒリヒリとした打弦を響かせ、もう1本のギターは曲全体に音色の織物を紡ぎ、時には最も絶妙な下降する4音のリフに引き戻す。

曲を呼吸させ、流れる様に、無理なく動かすという点でも、また、何を隠しているかという点でも、この演奏は見事である。16分あたりでグループが曲を空へと押し上げ、過負荷のギターの洪水が音楽の血管を貫いているときでさえ、この音楽にはまだ詮索好きな緊張感がある。

レコードを裏返すと、Suishou No Funeの音楽にはもう2つの側面がある。この曲は、一見即興的なダイナミクス、鈴と風が互いの周りをくるくると回る、暫定的でありながらどこか遊び心のある、余裕のあるナビゲーションで幕を開ける。この曲は、蛇行するベースとギターがハーモニカと絡み合い、まるでディランのブートレグから放送されたかのように遠くから録音されている。この後、"Endless Descent "が晴れやかなチャイムを鳴らし、下を向いてかき鳴らされるギターとファンシーなベースのシンプルさが、この曲に稀有なエレガンスを与えている。

それは、水晶の舟が最も得意とする、深いメランコリーの井戸の中から煌めく様な輝きを提供することを表現しているように思える。ローム、泥炭、土と一体となり、静かなメランコリーと深い歓喜に身を委ねながら、自然の中に迷い込んでいく。


Jon Dale

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An'archives (France)




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